医薬品やワクチン保管の温度リスクをIoTで可視化、効率的に運用
2025.08.20

医薬品の温度管理の正確さは、品質に直結します。本記事では、現場の負担を減らしつつ安全性を高めるIoT温度管理「ハサレポ」の活用法をご紹介します。
医薬品を安全に使うために欠かせない温度管理
ワクチンや試薬などの医薬品は、保管温度がわずかに逸脱しても品質や効果が低下します。
厚生労働省の「医薬品の安全使用のための業務手順書」でも温度管理の重要性は明確に示されており、以下のような取り組みが推奨されています。
- 保管庫の温度分布を把握する温度マッピング
- 毎日の温度点検と記録
- 測定機器の定期校正と記録管理
- 逸脱時の迅速な対応フローと緊急時の備え
参考:医薬品の安全使用のための業務手順書
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/i-anzen/hourei/dl/181228-2.pdf
人手による温度管理が抱える3つの壁
一方、医薬品の温度管理を手作業で行うと、次のようなリスクがつきまといます。
- 記録作業の負担とミス
手書きや手入力では、記入漏れや転記ミスが発生しやすく、休日・夜間は記録が途切れることも。
- 異常対応の遅れ
温度逸脱に気づくまで時間がかかると品質劣化や廃棄コスト増大し、診療や検査の停滞につながる。原因調査や報告などの現場負担も増加。
- 停電時の見えないリスク
定期測定では停電中の温度変化を把握できず、対応が後手に回る恐れがある。
このような課題を解決するのが、IoTによる自動監視と記録です。
IoT化で変わる温度管理 ― 24時間、見える・守れる・動ける体制へ
人手による記録や巡回に頼っていた温度管理は、IoT化を進めることで一変します。温度管理システム「ハサレポ」は、温度管理にかかる手間をIoTで支援するソリューションです。センサーとクラウドで現場を支援します。
IoTで温度変化を常時把握
5分ごとに自動計測し、冷蔵庫内の変化をグラフで表示。微細な温度変化も把握が可能に。データはクラウドに自動保存され、改ざんや転記ミスの心配もなく、定期監査や品質保証にもそのまま活用できます。
どこからでもリアルタイム監視・即時アラート
現場に足を運ぶことなく、離れた場所からスマホやPCで庫内温度を確認。上限・下限を逸脱すると、プッシュ通知やメールでお知らせします。深夜や休日でも素早い対応が可能になり、廃棄リスクを最小化。
対応状況は、その場からスマホを使った入力が可能。通知履歴とあわせてクラウドに記録できます。
停電リスクを通信切断で早期検知
ゲートウェイへの給電が止まると、通信の途絶をクラウドが検知してスマホへ通知します。停電の可能性を早期に把握し、現地確認や代替保管への切り替えといった行動を早期に促せます。
このように温度管理システム「ハサレポ」は日々の手間を減らしながら、異常対応から電源リスクまでワンストップでカバーします。
導入事例-ワクチンの廃棄リスクを大幅に低減
静岡県の小児科・はぐくみクリニック様では、ワクチン保管用冷蔵庫の温度と電源をIoTで常時監視。夜間・休日でも迅速に対応できる体制を整えました。
はぐくみクリニック様の事例紹介はこちら
https://sol.ratocsystems.com/case/hasarepo/hgkmclinic/
ハサレポで実現する「医薬品安全管理」運用手順
- 温度マッピングの実施
冷蔵庫手前・奥・室温を同時測定し、温度分布や季節変動を把握(年1回/配置変更時/新規設置時)。
- 温度点検と記録
自動測定・クラウド記録で日々の作業を省力化し、正確性を確保。
- 測定機器の定期校正
校正値をアプリに入力し、補正値画面を証跡として保管(年1回)。
- 逸脱時対応と記録
即時通知→現場確認→コメント記録で再発防止へ。
運用をマニュアル化した場合は、例えば以下のようになります。
目的
医療機器・薬品・検体等の品質保持のため、保管温度を継続的かつ適切に管理し、監査や立入検査時に証跡として提示できる形で記録・保管することを目的とする。
適用範囲
- 冷蔵庫・冷凍庫・恒温槽など、温度管理が必要な設備
- ワクチン・試薬・検体など、温度逸脱で品質に影響する物品
手順
3-1.温度マッピングの実施
- 方法:センサー本体および5mケーブル付きサーミスタセンサー2本を用い、冷蔵庫の手前側・奥側および室温を同時測定。設置状況を撮影し、写真で記録。
- 目的:庫内の温度分布や季節変動による影響を把握し、保管位置の最適化を行う。
- 頻度:新規設置時、庫内配置変更時、または年1回。
3-2.温度点検と記録
- 方法:ハサレポの自動測定機能により、設定間隔でデータを取得・クラウド上に自動記録。
- 目的:日々の温度確認を省力化し、記録の正確性を確保。
- 証跡:クラウド上の時系列データ。
3.3 測定機器の定期校正
- 方法:校正時に得られた補正値をハサレポアプリに入力。
- 目的:測定精度を維持し、計測値の信頼性を確保。
- 証跡:補正値入力画面のスクリーンショットを特定フォルダに保管。
- 頻度:新規設置時、または年1回。
3.4 逸脱時の対応フローと緊急時の備え
- 方法:閾値逸脱を検知した場合、即時通知が送信される。担当者は現場確認し、アプリのコメント欄に対応内容・原因・再発防止策を記録。
- 目的:迅速な是正措置と記録による再発防止。
- 証跡:通知履歴・コメント記録。
記録と保管期間
- 温度マッピング結果:5年間保管(PCの特定フォルダ)
- 温度測定データ:5年間保管(クラウド)
- 校正記録:5年間保管(PCの特定フォルダ)
- 逸脱対応記録:5年間保管(クラウド)
監査時提示方法
- クラウド管理画面から期間を指定してデータ抽出
- 温度マッピング・校正記録を併せて提出
導入効果とコストシミュレーション
シミュレーション条件:
- 冷蔵庫2台(ワクチン・試薬保管)
- 従来:1日2回手動測定(1回3分/台)
- 年2回の逸脱・停電、1回あたり廃棄コスト20〜30万円
- 人件費:時給2,000円
IoT化にかける費用(ハサレポの場合):
- 初期投資:温度センサー2台+ゲートウェイ1台+ライセンス費(20.5万円)
- 2年目以降:ライセンス費(1.5万円/年) ※いずれも税別
作業時間およびコストの削減効果:
- 記録業務:年間約48時間 → 約12時間に短縮(約7.2万円/年)
- 損失回避:年間約37.5万円 ※検知により損失を75%回避と仮定
- 監査準備時間:半日→1時間(約0.6万円/年) ※データのCSV出力により短縮
年間約45.3万円のコスト削減(初期投資は1年目で回収)
まとめ:安心を支える温度管理をIoTで効率化
ワクチンや試薬の品質は、たった一度の温度逸脱で損なわれてしまいます。ハサレポなら、24時間体制で温度を自動記録、異常時にはスマホやメールでアラートを通知するので、人手をかけずに温度管理が効率的に行えます。
さらに温度異常だけでなく、停電の把握にも役立ちます。現場で働くスタッフの方がより安心して業務に臨み、患者様も安心して医療を受けられる環境づくりのためのツールとして、ぜひ導入をご検討ください。

関連URL
温度管理システム「ハサレポ」紹介ページ
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