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温度管理は、工場や食品、医療、農業、空調など、さまざまな分野で製品の品質やお客様の安全・快適さを守るために欠かせません。正しい温度を保つことで、製品の安定性が向上し、利用者の満足度も高まります。
一方、温度に異常がないか監視したり、利用者からの暑い寒いといったクレーム対応で、現場の負担が増えていないでしょうか。遠隔からリアルタイムで温度を確認したり、設定をできるようにすることで、作業の効率が上がり、コスト削減や安全性の向上、さらにはお客様の満足度アップにつながります。
温度管理をおこなう際によく用いられている機器が「温度調節器」です。温度調節計、デジタル調節計などとも呼ばれています。この記事では、温度調節器(以下、温調器)がどのように働くのか、その基本的な仕組みと、温調器を遠隔監視する方法についてご紹介します。
温調器は、センサーで対象物や設備の温度(PV:実際の温度)を測り、あらかじめ決めた目標温度(SV)を保つための機器です。実際の温度と目標温度の差(偏差)をもとに、ヒーターや冷却装置を調整して、設定された温度にできるだけ近づけるよう制御します。
主な機能は以下の通りです。
温調器は、サーミスタ、RTD(抵抗温度検出器)、または熱電対などのセンサーを使って、リアルタイムに温度を測ります。この測定値が制御の基になるデータとなります。
実際に、測定された温度と設定温度との差を検出し、その差に応じて、ヒーターや冷却装置、バルブなどの動作を制御します。細かい温度調整が必要な場合は、比例・積分・微分(PID)制御を使い、ヒーターなどの出力を微妙に調整します。一方、温度が大きくずれたときには、単純なON/OFF制御で、該当する装置を完全に動作させたり停止させたりします。これにより、温度を目標値にできるだけ近づけるように制御しています。
温度が急激に変動したり、目標温度から大幅にずれた場合、温調器は警報を鳴らし、場合によっては制御を停止するなどの対応をします。これにより、設備のトラブルや安全上の問題を防ぐことができます。
温調器は、さまざまな現場で使われています。特に中小規模の施設では、導入が手軽で扱いやすく、コストパフォーマンスに優れた製品が重宝されています。今回は、こうした施設でよく採用され、品揃えも豊富な代表的なメーカーをご紹介します。
https://aa-industrial.azbil.com/jp/ja/products/controller-recorder-communication-gateway/controller
https://www.fa.omron.co.jp/product/selection/53/func_spec.html
https://www.rkcinst.co.jp/products_category/digital-controllers/
https://www.fujielectric.co.jp/products/instruments/products/controller/top.html
温調器は自動で温度を制御しますが、温度を確認したり設定温度を変更する際には、現場まで足を運ぶ必要があります。IoT温調器遠隔監視システムは、このような手間を、スマホとクラウドを活用して削減するものです。
IoT温調器遠隔監視システムの情報をみる
以下では、温調器のIoT化で実現する遠隔監視システムのおもな機能を紹介していきます。
各設備の温調器から送信される温度データを、Webアプリでリアルタイムに確認できます。温度は、スマホやPCの画面に一覧で表示。温度を確認するためにその場に足を運ぶ必要がなくなり、作業効率が向上します。
設定温度を超えた場合や急激な温度変動が発生した際には、即時にアラート通知を送信します。異常をいち早くキャッチし、すぐに対処できるため、安全性が向上します。
現場での操作が必要だった設定温度の変更も、このシステムならスマートフォンから直接操作が可能です。急な利用者からのや環境変化に柔軟に対応できるため、常に最適な温度環境を維持することができます。
温度の計測値は、クラウドにログとして蓄積されます。温度管理表や運用レポートの作成に活用できます。温度変化の可視化により、不具合発生時の究明や改善提案などにも役立ちます。
既存の温調器にあとづけで通信ユニットを取り付け、無線でデータを送信します。ゲートウェイで各温調器のデータを集約し、LTE-M回線でクラウドに接続します。この仕組みにより、いつでもどこでも遠隔で温度の監視や操作ができるようになります。この構成では追加のWi-Fiや通信設備が不要で、低コストかつスピーディに導入可能です。
【ラトックシステムのIoT温調器遠隔監視システム構成図】
以下では、サウナの温度調整をおこなっている温調器を例に、IoT温調器遠隔監視システムを導入した場合の運用フローとメリットを解説します。サウナや温泉施設では、利用者の快適性と安全性を保つため、温調器が重要な役割を担っています。最適な温度に調整することで、リラックス効果を高め、顧客満足度を向上させています。また、ガイドライン等に沿った安全基準を維持するためにも必要です。
サウナの温度を
遠隔からモニタリング
ここでは、ラトックシステムのIoT温調器遠隔監視システムを導入した場合の投資と運用コスト、既存の巡回での温度確認、記録などの作業にかかる人件費削減効果についてシミュレーションしてみます。(以下の金額は、いずれも税別となります)
1日の人件費:500円(1,500円 × 1/3時間)
年間の節約額:150,000円(500円 × 300日)
年度 | システム費用(円) | 人件費削減効果(円) | コスト削減効果(円) | 累積効果(円) |
---|---|---|---|---|
1年目 | 300,000 | 150,000 | -150,000 | -150,000 |
2年目 | 0 | 150,000 | +150,000 | 0 |
3年目 | 15,000 | 150,000 | +135,000 | 135,000 |
4年目 | 15,000 | 150,000 | +135,000 | 270,000 |
5年目 | 15,000 | 150,000 | +135,000 | 405,000 |
このシミュレーションでは、1年目は初期投資の負担でマイナスですが、2年目でトントンに、3年目以降は毎年約135,000円のコスト削減効果が期待できます。結果として、長期的に運用効率の向上と確実な経済効果が見込まれることがわかります。
さらに、サウナでは顧客満足度を上げることで、リピーター確保による売上アップも期待できます。
このIoT温調器遠隔監視システムは、RS-485接続(Modbus RTU対応)の温調器に対応しています。以下のモデルに対応済みです。
その他のメーカー、モデルをお使いの場合もお気軽にご相談ください。
温調器に遠隔監視システムを導入すると、スマホやPCから温度の確認、設定変更、アラート受信が可能になります。たとえば、離れた場所にある設備で温度異常が発生した場合や、利用者から温度に関するクレームがあった際に、迅速な確認と対応が実現できます。温度の見える化によって、安全で快適な環境の維持と顧客満足度の向上が期待できます。遠隔監視システムを活用して、効率的で効果的な温度監視を実現しませんか。
ご不明な点などございましたら、以下よりお気軽にお問い合わせください。