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もろみ日誌

三和酒造 代表取締役社長 鈴木様

酒造りのデータを正確に把握して共有、 現場で働く人のモチベーションを高める。

清酒「臥龍梅」で知られる三和酒造の創業は貞享3年(1686年)5代将軍徳川綱吉が生類憐みの令を発布する前年に遡ります。
以来300有余年,静岡市は清水区西久保の地で脈々と酒を造ってきた同社は今年、酒造り専用 IoT システム「もろみ日誌」を導入、伝統ある酒造りに新たな風を吹き込んでいます。

あくまで高品質の酒造りを目指す

日本酒の市場が縮小を続ける中、生産量を落とすことなく一貫して高品質の酒造りを行っているのが三和酒造です。
「酒造りにおいて生産量を増やすことは簡単ですが、生産量を増やしてかつ品質を維持するのは至難の業です。事業としては売上や利益の増加も大切かも知れませんが、弊社はあくまでも良い酒を造ることを目指しています」(鈴木克昌社長)。

日本酒はあくまでも自分の舌で味わって判断すべきというのが、消費者への鈴木社長のアドバイスです。
「世の中には銘酒とされる銘柄も少なくありませんが、お酒は勿体をつけて飲むものではないと私は思っています。自分の舌で味わって本当に美味しいと思う酒を飲むことが、ひいては本物の酒造りにつながります。弊社の「臥龍梅」には自信があります。酒屋に限らずスーパーやコンビニでも入手できます。誰もが手軽に買って飲める美味い酒– そのような酒造りが弊社の基本です」。


三和酒造
鈴木克昌社長

長年の夢を実現するIoT

同社における IoT の活用は、生産量の拡大が目的ではなく、あくまでより良い品質の酒造りと働く人の環境改善を目指したものです。

三和酒造が酒造り専用 IoT システム「もろみ日誌」を導入した目的は、「品質や出来高に深く影響する品温、室温、ボーメ、アルコール度、酸度、アミノ酸、グルコースなど酒造りに関するさまざまなデータを正確に把握して、杜氏や蔵人だけではなく経営者も積極的に共有すること、酒造現場で働く人々の労働環境を改善すること」の2点に集約されます。

酒造りに果たす杜氏の役割は重要です。米を精米し、洗米・浸漬・蒸米の工程を経て、麹づくり、酒母づくりの後、もろみを発酵させるという酒造りの一連の流れにおいて、洗米や浸漬の時間や水分濃度、仕込では室温や品温、湿度、状ぼうの状況など酒造りに関するすべての判断は杜氏の勘と経験が頼りです。
最近は各工程での製造データを基に酒造を機械化して杜氏不要の社員造りを実現している酒造メーカーも増えていますが、あくまでも杜氏を頭とした酒造りにこだわっているのが三和酒造で、代々にわたり南部杜氏との付き合いが続いています。

つまり杜氏を頭とした酒造りを維持しながら酒造 IoT の導入に踏み切ったことが同社の特徴です。杜氏にすべてを任せているとはいえ、各工程のデータすべてを企業として把握し蓄積しておくことは重要です。
さらに、正確なデータをリアルタイムに入手することによる現場作業の数値化・見える化による客観的な判断は、杜氏にとっても新たな戦力となっています。

「良い酒造りを目指して努力してきたこれまでの経験を活かし、各工程で生じる生のデータを入手してこれを活用することでより高いレベルの酒造りを実現する」という鈴木社長の長年の夢が、「もろみ日誌」の導入でようやく現実のものとなりました。

離れた場所からリアルタイムに品温を把握できるIoTシステム

今回導入した酒造品温モニタリングシステム「もろみ日誌」は、センサーとSub-GHzの無線通信およびクラウドを融合した IoT システムです。
酒母・もろみ工程における品温管理について、自動計測したデータを無線でリアルタイム送信することで、高頻度かつ高精度のデータが自動収集され、データの社内共有が可能になります。
さらに現場の負担を軽減する効果も大きく、品温・室温のリアルタイム把握によって現場に行くタイミングを予知できるので、ピーク時は睡眠が不規則となる蔵人にとっては作業環境が大きく改善しています。

品温・室温などセンサーから自動収集されるデータ以外に、南部杜氏が「ツラ」と称する状ぼうも重要なデータですが、これはスマートフォンで撮影してクラウドに送信します。
また品温が設定温度をはずれたときにはスマートフォンにアラート通知する機能も現場の人々にとって心強い味方となっています。

撮影した状ぼうを残す
通知温度は日ごとに指定可
過去のBMD/品温と比較

1時間ごとに自動収集される各タンクごとの品温や室温に加えて、ボーメ、アルコール度、酸度その他の関連データを入力することで、仕込関連データが一括管理でき、このデータの蓄積が大きな資産となります。
このデータを何年も蓄積することによって、「今年の仕込状況は○○年のデータと酷似している」など年度を比較することで、類似状況を参考にした早めの対応も可能になります。
職人の勘と経験にプラスして IoT による客観的なデータが加わることで酒造りに新たな視野が拓けます。
鈴木社長自身も遠隔地の事務所からデータを随時確認するなど、現場とのデータ共有を積極的に行い、仕込の状況を常に把握できる環境を整えました。

もろみ経過簿の出力にも対応

酒造メーカーには国税庁による規則で保管義務のある「もろみ経過簿」が必要で、これまでは手書きで作成していました。
しかしすでに収集されているデータを利用して提出用の帳票を出力したいとの要望に応えて、ラトックシステムでは今年8月に「もろみ日誌印刷対応版」を投入します。

これは蓄積したもろみの仕込データを、保管義務のある帳票フォーマット形式で印刷することが可能となり、手書きしていた労力を削減出来ます。

市場開拓に新たな可能性を拓く

同社戦略の今後の重要なテーマが海外展開です。

中国・韓国・台湾をはじめとするアジア諸国、ヨーロッパ諸国、北米諸国を中心にすでに海外進出を行っている同社ですが、「10 年後を見据えた戦略が必要」との判断から息の長い戦略で臨んでいます。日本酒が世界に定着する頃には、もろみデータの蓄積や分析が進み、蔵では世界各地の嗜好に合わせた酒造りがおこなわれているかも知れません。

もろみの状態をデータで見える化することで離れている現場と情報を共有、これらのデータを蓄積することで世代を超えた酒造りの継承を図り、さらに1年で最も寒い時期にピークを迎える酒造りにおいて、蔵に行くタイミングを予知することで蔵人の負荷を軽減する–鈴木社長が目指す酒造りに「もろみ日誌」が果たす役割はさらに大きくなりそうです。

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